愛されたかった悪女
ホテルの客たちが興味深そうに、私達を見ているのが分かったけれど、責めるのを止められない。


あの子は驚いて彼の腕の中で身じろいだ。


そうしたら「動くな」ですって?


まったくハヤトは私に嫉妬させる為にワザと言っているの?


『何度も電話したのに!』


不意に悲しくなって、目頭が熱くなった。


それなのに、彼は


「出る必要がないからだ」


日本語で、あの子にも分かるように言った。


私は昼間、何度もハヤトに電話やメールをした。


だけど、それはすべて無視された。


『休暇を取って来たのよ?時間を割いてくれてもいいでしょう!?』


私は艶やかな下唇を噛み、涙を浮かべてみた。


『ねえ、ハヤト――』
『後で電話する』


ハヤトはそう言うと、あの子を抱いたままエレベーターに向かって歩き始めた。


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