愛されたかった悪女
「昨日は楽しめたかしら?」


『そんなわけないでしょう?』


あの子らしくない、苛立った声に私はフフッと微笑む。


「でも、彼に話せないから、貴方は楽しいフリをしたはずだわ」


『……』


「子ネコちゃんはご機嫌斜めなのね? 昨日は彼に抱かれたんでしょう? 彼のセックスは最高よね?」


私の言葉にあの子はカッとなったようで、電話が乱暴に切られた。


嫉妬心からあんな事を言ってしまった。


彼のセックスは最高よね?……ハヤトがあの子を大事に抱くのを想像してしまうと持っていた受話器を投げつけたくなった。


かろうじてその衝動を抑え、もう一度あの子の部屋へとかけた。


しばらく鳴らしたが、電話にあの子は出ない。


それでもしつこく鳴らす。


部屋にいるのは分かっているから。


そこで、やっとあの子は出た。


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