愛されたかった悪女
「勝手に切るなんて許さないわよ?いい事?10分後に1208号室へ来て」


それだけ言うと今度は私が一方的に電話を切った。


きっとあの子は受話器を持ったまま茫然としているはず。


まさか私が彼らの隣の部屋を取っているとは思ってもみなかったはず。


あの子の驚いた顔が目に浮かぶ。



******



あの子は10分以上経ってからやってきた。


私は、にっこり笑って彼女を招き入れた。


重い足取りで彼女は入ってくると、リビングの中央にスーツケースが2つ置かれているのを見て足を止めた。


そして私を見る。


「これからパリに飛ばなくてはならなくなったの で、考えはまとまったかしら?」


疑問を口に出さずとも答えてあげた。


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