雪花

 ある日、女官が李梗に、


「姫様、王様が今すぐに王室に来られるようにのことに御座います」
と言った。


「父上が?」


 王が呼ぶなど滅多に無かったので戸惑いを見せる。眉間のしわを無意識に寄せた。
 ……何か大変なことが起きたのかしら。


 良からぬことばかり考えていたら王の室に着いた。


 王の室は広大で、玉座には豪奢な金箔が施され豪華絢爛である。王の威厳が見事に玉座に表れている。


「王様、李梗様に御座います」


 真っ直ぐ李梗を見た。針が突き刺さったような視線を感じた。


 手の甲が湿っぽくなっていくのが分かる。中に入ると王は静かに、李梗にこう告げた。


「話があって呼んだ。お前も、もう八つだ。そこで、従者を用意した。従者の者こちらに参れ」


 王がそう言うと部屋の奥から人影が見えた。人影は、少年であった。
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