魔女の悪戯

レオは、柚姫を真っすぐ見つめ、そっと微笑んだ。


「私は、元より、貴女だけのもの。
他のだれでもなく…」


ラミア、王女様の…。


そう、いくら我が儘を言われようと、寝不足になろうと、己の仕える姫は、たった一人。


ラミア王女、ただ、一人。


いつかは結婚し、他の誰かの手に渡っても。


すべては、王女様のために。


「…ただ、すみ……」


柚姫は思わずレオに抱き着いた。


レオも、柚姫だと全く嫌悪感がなく、そっと抱きしめ返した。


それはきっと、柚姫とラミア王女が、何処か似ているから…。


柚姫は、今まで隠していた本音を、話し始めた。


「本当は、怖い…。
顔も知らぬ相手に嫁ぐなど、嫌でたまらぬ。
私は…。
私は、出来るものなら、そなたに嫁ぎたかった。
そなたと、ずっと一緒にいられたら、どけだけ……。
しかし、それはもうかなわぬ。
それに、私は風見家の姫。
家のために、家臣の、岩佐の民のためとなる相手に嫁がねばならぬ。
ずっと昔から、わかっておったのに。
私は、弱い。
輿入れが明日となった今でも、そなたの事ばかり考えてしまう。
守槻の、若殿様に嫁ぐ身だというのに…」


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