魔女の悪戯
「なんだ、忠純、たるんでおるぞ。」
野太い声に、忠純がビクッとなる。
その声の主は、この城で剣術指南役を勤めるほどの剣豪のおっさん。
自らをこの國で1番強いと思っているため、忠純と初めて稽古で対峙した時、苦戦の末負けたことを根に持っているのか、今もこうして何かにつけ口を出して来る。
「ほれ、そなたの番だ。」
忠純の持ってる木刀を指差し、くっくっと喉を鳴らして笑う。
姫の事で頭がいっぱいでぼけっとしている忠純を、こてんぱんにしてやろうという魂胆が見え見えだった。
剣豪とはいえ意地汚いおっさんである。
忠純は思い腰を上げ、おっさんに向き合うと木刀を構えた。
一度目を閉じ、深呼吸をして集中力を上げる。
おっさんが木刀を振り上げた。