監禁恋情
「ええ…。彼女たちを連れ出します。
これは僕の独断ですが、あなたにも黙っていてもらいたい。」

少し力をこめて、和樹が言った。

「…和樹様が…旦那さまに逆らうなんてねぇ。」

男は、驚きの表情を浮かべた。
そして、ニヤリと笑った。

「まぁ、和樹様も年頃ですからね。
こんな可愛いお嬢ちゃんに頼まれちゃ断れねぇか。」

男が、仕事口調から急にくだけた口調に変わった。
どうやらこの男と和樹はなかなか仲がよいようだった。

「そういうわけです。あなたには本当に申し訳ない。」

「いいんですよ、どうせ俺みたいな下っ端の代わりはいくらでもいますし、この仕事に未練もありませんしね。」

愉快そうに笑って、さくらの肩を叩いた。

「お嬢ちゃん。協力してやるよ。
さっきのはちょっと迫力あったぜ。」

そう言われ、さくらは先ほど男をガラス片で脅したことを思い出した。

「ご…ごめんなさいっ。」

さくらが謝ると、男はまた笑った。

「いいって。車出しといてやる。
和樹さま、俺の車はわかりますね。」

「ええ、ありがとうございます。」

和樹が礼を述べると男は手を挙げて行ってしまった。

「さぁ、紀一さんを運びましょう。
本当はあなただけをお連れしたいのですが。」

和樹が悪戯っぽく笑った。
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