spiral
(ごめんなさい……ごめんなさい)
心の中で何度も謝る。
優しい人を傷つける罪悪感。
今日はたくさんのいろんな傷を自分に与えている。
(痛い、痛いよ、ぉ)
胸の痛みにこらえきれず、やっと押し出すように出した言葉。
「来ないで」
「え?」
驚かれて当然だ。
「お弁当、いら……ない」
それだけ言って、通話を終わらせた。
鳴り続ける伊東さんからの着信音。
布団の中に携帯を押しこんで、リビングで汚れた床を掃除していた。
嘔吐物の臭いに何度もむせて、トイレで何度か吐いた。
顔は時間が経つと腫れあがって、タオルを冷やして何度もあてた。
絞められた首もひどく傷んだけど、冷やせなかった。
どこか息苦しくなって、首に触れられない。
触れたら、さっきの絞められていた感覚がすぐさま戻ってくるから。
薄く紅く残る、ママがつけた無数の傷痕。
ママに拒絶された証拠。
拒絶され、こんな思いまでしたのに、心の奥にあるのはひとつのこと。
たとえ愚かだといわれてもかまわない。
縋りたかった。
ママの娘であるという事実に。
「言うこときくから……ぁっ」
愛されたい気持ちだけ。
満たされないその欲求を叶えるために、従うだけ。
でも、いつになったら愛される?
アキが空に逝ってから何年経った?
あれから何年も待ち続けた。先が見えなくても待てた。
この先も同じ思いで待ち続けていたら、いつかは報われるの?
長い長い片思い。
実の母親への愛情を待ち続けて、想ってる。
「ママが作ったオニギリでいいから、食べてみたかったな」
ささやかな願いすら、きっと届かない。
そうわかってても、まだママを想ってた。想いたかった。
生かされていることが正解なのか、不正解なのか。
ママに聞けば、不正解と即答されそうだななんて思って、苦笑いをした。