光の射す方へ
分岐点
「明るく活発で、誰とでも仲良くなれる、素直な子です。」

私たちの通知簿はだいたい似ていた。
「素直…」

上手くやっていたもんだ。2人は学校では明るく元気で友達も多かったが2人だけになると、よく傷をなめあった。夕暮れの今池のガードレールで。

だが私が泣きながら話す方が多かった。アズサちゃんは、確信は絶対に話さず、話の最後には必ず「でも平気!」
口癖のように言った。はるかにアズサちゃんの傷の方が深かったのだろう。

「ねぇ、アヤちゃん2人でどっか遠くに行こうよ…私もうこのままやったら殺されるかもしれん。」

目の横の大きなアザが黄色く変色してきた頃、顔中に点々と赤いアザが増えていた。この頃より、夜の10時を過ぎるとアズサちゃんの悲鳴にも似た泣き声が地区中に響いた。


私はアズサちゃんがどういう状況にあるのか、気づいてあげるのに時間がかかりすぎた。もう11歳になっていた。

「先生!アズサちゃんを助けてあげてください!」
「お母さん!アズサちゃん絶対に叩かれてる!何とかしてあげて!」

子どもの叫びは届かない…

2人は離ればなれになった。中学校1年13歳の春。私たちの大きな別れ道、大きな分岐点。
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