俺はその時、どう行動するか。
「あ…あの~、実はその…」




俺は言葉を探しながら、フロントに手をついて従業員の胸元をみた。


いかにもホテルマンというような雰囲気の制服の胸元には『麻生(あそう)』と名札がついてある。


品の良い白髪のこの従業員の男は麻生という名前なのか…。




「実は麻生さんにお願いがあるんですが…」


「はい、なんでございましょう」



お願いをしやすくする為に、親しみを込めて名前で呼んでみたのだが…


特に姿勢は崩さずマニュアル通りの笑顔を保っている麻生さん。


このじいさん、ちょっと固そうだな…。




「あの…さっきも言いましたけど、僕明日結婚式なんです」


「左様で御座いましたね。この度はおめでとうございます」


「あ、ありがとうございます。…じゃなくてですね」



当然だが麻生さんの頭にはクエスチョンマークが浮かんでいる。


もうここは素直にかつ単刀直入に言ってみるしかないか…。




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