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「柏原、今日だけよ?」

「存じております」


私が陽子さんに聞こえるように念を押して注意を促すと、柏原は当然のように頷いた。


「茉莉果様は、相変わらず柏原さんに厳しいのね?」


「お父様とお母様があなたに甘すぎるの!」



今度は、両親にも聞こえるように言った。



「まぁまぁ、茉莉果久々に皆で集まれたのだからいいじゃないか! それより……」


お父様は楽しそうにワイングラスを傾けると声を潜めて柏原に詰め寄る。

「柏原くん、ミッションMは未だ破られてはいないかい?」


ミッションMって何かしら?


「旦那様、プロジェクトMではなかったでしょうか?」


プロジェクトM?


「そうだ! そのプロジェクターMは順調か?」


プロジェクターM?

柏原は咳払いと共に「それは映写機でございます」と呟くと陽子さんが苦笑いをした。



不思議に思って柏原を見つめると小さく頷き

「問題はございません。ご心配なさらないで下さい」

自信に満ちた柏原の言葉に、お父様が何について質問したかも分からないけど一同深く納得してしまう。


柏原には、こういう一面がよくある。


誰彼構わずに、頷きたくなってしまう。

決してNOとは口にさせない何か特別な威圧感があるんだ。



時には安心させられ
時には反論できず
時には従ってしまう


それが柏原だ。
柏原が心配ないと言うなら大丈夫。




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