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────かぼちゃの甘い香りがしてきた。

涙を拭いて、鞄から着替えを取り出す。

痣になってしまった腕が隠れるように、袖にレースがあしらわれたカーディガンを選ぶ。




寝室から素足のまま廊下に出ると、細い木の階段が下階へと続いていた。


床も壁も、全てが木で作られていて、ポタージュの香りと共に木の香りがしている。


屋敷よりも天井が低くて圧迫感があるけど、北欧風の可愛らしいロッジだ。




そういえば、私は昨日から食事らしい食事をしていないわ。お腹がペコペコよ。

冷たい木の階段を走り降りると、そこは広々としたリビングルーム。


一階の部屋はこの部屋だけみたい。



「こちらへどうぞ」


どこか威圧的な柏原。大木から座る部分だけを切り貫いただけの椅子を指差す。


「ありがとう」


吸い込まれるように、木の椅子に座る。
冷たい直角な背もたれ屋敷の柔らかな皮張りのダイニングチェアとは全然違う。


「ルームシューズをお持ちにならなかったのですか? 後程、ご用意いたします」


柏原は、無表情に素足の私を見る。無作法を叱られたようだった。

ダイニングテーブルも、大木を縦に切り裂いたような大きなテーブル。

自然な木の色合い。


というか、この家は全てが木で作られている。

壁にかけられた時計も、たくさんの本が並べられた本棚も……井桁に組まれた丸太にクッションがのっているだけのソファセット。

新しいわけではないけど、自然な木の香りが漂う。


リビングには、大きな窓がある。カーテンがない。
外には、森が見えていた。見渡す限りの森林は、寝室から見えたものと変わりない。


「ここは、どこなの?」


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