先生と教官室2〜新しい道〜





教卓に手をついた進藤先生は、ぐるりと教室中を見渡していく。





一人一人と目を合わすように、ゆっくりと。






そして、小さく息を吸って口を開いた。







「皆さんに僕からお願いがあります。今日は、自分の気持ちを出来るだけ言葉にして下さい。」





…気持ちを、言葉に?






「ご両親や友人、恋人、誰でも構いません。皆さんが大切だと思っている人達に、是非その言葉を伝えて下さい。」








「…例えば、どんな事ですか?」








進藤先生の言葉に、最前列に座る女子生徒が不思議そうに尋ねた。








「そうですね…。ありがとう、お世話になりました、これからも宜しく。…伝える言葉はありきたりなものでも大丈夫です。大切なのは、それを自分が思い相手に伝えるという事ですからね。」








自分が思う気持ち。






そういえば、言葉にして伝える事は少ないかもしれない。







相手にはもっと言葉にして欲しいって求めるのに。






自分が出来てないなんて駄目だよね。








「それと、特別な日には不思議と勇気が湧くものです。ですから、今まで隠していた気持ちを伝えてみるのも良いかもしれません。」








…それって、もしかして!!








「えっ、先生!!それって告白ってこと?」







「まじかっ!!」








私が思った事は皆と同じだったのか、教室中がざわつき始めた。








その皆の反応に、進藤先生はニヤリと笑みを浮かべる。









「特別な日だから出来る事ってあると思うんです。だから、隠した気持ちを持っている人は頑張ってみて下さい。




……僕も今日、頑張りますから。」











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