解ける螺旋
この先何があっても、私と健太郎の関係は変わらない。
ただの幼なじみの関係から脱却せず、それ以上にも以下にもならない。


私が樫本先生を拒まなかった。
その選択で私達の関係はベクトルを定めたんだと、そう言われた様な気がした。


先生を好きかと言われたら、多分私は今でも『怖い』と答える。
だけどどうしようもなく惹かれている。
先生に言われた言葉を鵜呑みにする訳じゃないけれど、知りたいと思うのは、私が確かに先生の事を気にしてるから。


それが純粋な興味関心なのか、恋愛感情を伴うものなのか、それはまだわからないけれど。
健太郎とのどんな可能性を失っても、たとえ私の感情が狂わされているのだとしても。
今私の心の大半を占めているのは、ずっと一緒に育って来て、いつも傍にいてくれた健太郎ではなく。
振り回されてばかりでどんな人かもわからない、怖いとすら思う樫本先生だって事は自覚出来る。


そう自分で自覚した時、私は初めてその感情に気が付いた。


――そっか。私はずっと、健太郎の事を好きだったのかもしれない。


言葉に出来ないまま、何も変えられないまま、私自身が壊した恋。
だからこんなに切ないんだと思えば納得出来る。


もう私と健太郎のこの先の未来に、恋は有り得ない。
健太郎にはっきり言われて、それに私もはっきりと答えて。


私はあまり自覚もないままに、失恋を経験した。


健太郎に向く自分の気持ちがなんなのかもわからないままで。
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