解ける螺旋
今の私達はただの幼なじみだけど。
私や健太郎が選ばなかったどこかの分岐の別の選択肢の先には、もしかしたら恋人同士の私と健太郎がいるかもしれない。


『もしも』の世界。
あらゆる小さな分岐から連なる、無限の未来。
まさに私と健太郎が興味を持って研究している、エヴェレットの多世界解釈というのはそういう事だ。


実際には机上の空論。
だって自分自身で、違う選択肢を選んだ自分の他の世界を知る事は出来ないんだから。
他の誰かが物語を見る様に私と健太郎の選択を見ていたとしたら、違う関係の私達がいるのかもしれないけれど。


「……もしかしたら、ターニングポイントを見過ごしたのかもね」


自分の思考の先で突如口にした言葉だったのに、健太郎は何故かうん、と返事をした。


「……まだこの先の未来にもあるのかもしれないけど……。
でもきっと、この先ずっと俺達は何も変えられないんじゃないかな」


きっと私と同じ事を考えていただろう健太郎が、そんな事を言った。
そしてその言葉に、明らかな結末をぶつけられた様な気がした。


「……そうだね」


私も決定的な言葉を放って、全ての『もしも』を消し去った。
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