解ける螺旋
樫本先生に出会った時、『あの人』に似てる事は話した。
だけど健太郎は、自分も『あの人』に会った事があるように言っている。


そんなはずがない。
健太郎が見知ってるはずないのに。


何よりも、私の夢をどうして健太郎が『記憶』してるのか。


「お前が殺される『記憶』は、いつも場所が違うし年齢だって違う。
だけど俺が見る樫本先生の姿はいつも一緒。
今のままの樫本先生にそっくりなんだ。
いくらなんでも、それが現実だなんて考えられなかった。
奈月が逆ナンしてまで似てるって騒いだせいで、なんか変な影響でも受けたかと思って。……だけど」

「……」

「『影響を受けた』
それが鍵なのかと思った。
だから、ありえない事でも、前提にして考えてみたら、怖い位説明出来る。
……結論から言う。
俺と奈月が感じてる違和感や感覚は、樫本先生から影響を受けて流れ込んで来たもの。
樫本先生は何らかの方法で、俺と奈月の……いや、奈月の多世界を観測してる」

「……!」


あまりに突拍子もない話に、私は思わず息を飲んだ。


私の多世界。
これまでに幾度も越えてきた沢山の分岐点で、選ばなかった別の選択肢を選んだら。
その先に、幾つもの『もしも』の世界が生まれる。


それは、私と健太郎が研究し続けた『エヴェレットの多世界解釈』
まさにそのもの。


もちろん、『もしも』の世界を自分自身で知る事は出来ない。
多世界解釈の理論は、第三者である『観測者』の視点を通した物だから。


ありえない事を前提にする、と先に言われていても、とても信じる事が出来ない。


笑って誤魔化そうとした。
だけど健太郎がとても真剣な顔をしてるから、まさか、って一言も躊躇ってしまった。
だから私も心を落ち着けて考えてみる。
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