解ける螺旋
話題としてはかなり唐突だったけど、やっぱり西谷さんには健太郎の笑顔は効果的らしい。
西谷さんは訝しがる様子も無く、はにかんで元気に答えてくれる。


「兄が……。医学生なんです。
昔から、私の病気をいつか自分で治すって言ってて。
その兄が大学に入学してすぐの頃だったと思います。
医学生向けの雑誌で治験の記事を見たらしくて、詳しく調べてくれました。
薦められて始めはどうしようかと思ったんですけど、放っておいても二十歳まで生きられないって言われてました。
兄は可能性があるならチャレンジして欲しいって言ってくれて。
私は兄にとってもたった一人の家族だから。
私がいなくなったらきっと寂しがるだろうなって思って。それで応募したんです」


西谷さんの口から出たお兄さんの話に、内心で動揺した。
この世界では医学生だと言うお兄さんが、本当に愁夜さんなんだろうか。


「へえ。……お兄さん、すごく西谷さんの事大事にしてるんだね」


健太郎も今の愁夜さんと結び付けて考えているのか、多分イメージが湧かないんだと思う。
半分素でそう呟くと、西谷さんはちょっとだけ首を傾げた。


「多分一緒に育って来なかったって事もあると思います。
私の両親は私が生まれてからすぐ事故で亡くなって、私と兄は別々の親戚に引き取られて育ちました。
私は病気があるので、父方の祖父母に引き取られたんですけど、兄は母方の親戚の家に。
だけどその親戚とウマが合わなかったみたいで、兄は小学生の時に東京の施設に移りました。
自分の方が大変だったのに、いつも私には優しくて、心配してくれて。
両親の顔を知らない上に兄とも一緒に暮らせない病気の私に、何も出来ないって負い目があったんだと思います。
だけど治療者に決まってからは、それまで過ごして来た九州から東京に来て、この病院に移ったので、それからずっと兄と二人で暮らしています」

「そっか。……それじゃあお兄さん、西谷さんが元気になって嬉しいだろうね」
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