解ける螺旋
『愁夜』


絶望を感じるほど、珍しい名前じゃないかもしれない。
だけどこれが偶然だと言うなら、あまりにも出来過ぎている。


偶然じゃない。ここまで来たらもう、これは必然なんだ。
健太郎もさっき仕組まれたと言っていた。
何がどう仕組まれたのかはわからないけれど、今私の周りで起きている事の全てが仕組まれている。
入念に計算された事象が全部絡み合って、複雑な螺旋を作り上げている。
それがあまりにも緻密だからこそ、偶然だなんて言葉で片付けたくなる。
どういう意味を持っているのか説明出来ないでいる。
だから私も、健太郎の話を信じるしかない。


愁夜さんは確かに未来の世界から来たんだ。


この世界の愁夜さんは私と同い年で、医大生として勉強している。
心臓に病気を抱えた妹の為に、今までずっと一人で頑張って来た人。


私が知っている愁夜さんからは想像がつかない。
だけど、心のどこかでそんな愁夜さんの面影を知っている気がした。


私に見せる冷たくて残酷な態度。
だけど私を見つめる瞳に浮かぶ、揺れる光。
何か辛い事から逃げる様に。
だけど逃げられずに、諦めた様な。
そう、あんな目で見られるから、私は冷酷になりきれない愁夜さんを憎めない。


愁夜さんの存在に、気持ちがギリギリまで追い詰められてるって、わかっていても。
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