解ける螺旋

 神様の決めた運命

病院を出てから黙ったままの私を、健太郎はタクシーで送ってくれた。
いつの間にか降り出した雨が、窓ガラスを叩き付ける。
雨の中、見慣れた景色も全てが滲んで見えて、やけに現実味がない様に思えた。
そんな景色をボーッと眺めていると、何も知らない西谷さんの嬉しそうな笑顔と声に更に追い詰められるような気がする。
とても息苦しくて、私は両手で顔を覆った。


「奈月。気分悪い?」


何かを秘めた様な色を孕んだ声で、健太郎が私を気遣う。
だけど私は首を横に振って否定するのが精一杯だった。


「……健太郎は……もう全部わかってるの?」


なんとかそれだけを口にした。
少しの沈黙の後、健太郎は、いや、と短く呟く。


「俺にもまだ、先生が今の俺達の前に現れた目的はわからない」


その言葉に、私はようやく顔を上げた。
それを確認すると、健太郎は窓枠に肘をついて、夜の雨の街の景色に目を遣った。



「俺と奈月の気持ちを引っ掻き回してるのはわかる。
だけど、何の為かはわからない」


健太郎の悔しそうな声を聞きながら、何かが引っ掛かった。
だけどそれは形を成さないまま、私の中からも消えてしまいそうになる。


――はっきりさせないと。


私の中のあの人をはっきりさせないと。


「……健太郎、ごめん。ここで降ろして」


思い付いた途端、私はそう呟いていた。
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