解ける螺旋
は? と、健太郎が訝しそうに私を見た。
そして私の横顔をジッと見つめたまま、表情を険しくするのがわかった。


「どこ行くんだよ?
先生のとこだったら、許さない」


それでも気にしない。
私は健太郎から目を逸らしたまま、少し身を乗り出して、運転手さんに声を掛けた。


「すみません。ここで降ろして下さい」

「はあ。
……じゃあ次の信号でいいですか?
車道側になるんで気を付けて下さいね」


言いながら、運転手さんはウィンカーを出して、車を一番左の車線に移動させてくれた。


「……奈月、いい加減にしろって」


イライラしている健太郎の声はスルーする。


「運転手さん、ありがとうございました」

「奈月、ちょっと待てよ」


ドアを開けた途端に健太郎に腕を掴まれた。
だけどこんな通りの真ん中で健太郎と口喧嘩をしてる場合じゃない。
私はその手を黙って振り払うと、後続車を確認してから小さくドアを開けて外に足を踏み出した。


「……っ……!」


健太郎の苛立ちを強烈に感じながら、停まっているタクシーの前を通って、私は歩道に紛れ込んだ。


「待てって!」


健太郎の声が背後から追って来る。
後ろから腕を掴んで引っ張られて、健太郎が私を追ってタクシーから降りて来た事を知った。
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