解ける螺旋
――あの事件。
さすがにそれを言われると、私も謝る以外に何も言えなくなる。


今から13年前。
あの事件をきっかけに、確かに私の両親は変わった。


それまでも研究の事になると私を放っておきがちだったけれど、それからは何かに取り憑かれた様に研究に打ち込んでいた。


それまでとは違う。
研究を楽しんでると言うよりは、それが義務の様な。
繋がれた足枷の様な。


あれからの二人は何だか見ているのが怖い位で、それまでは、よくどんな研究や実験をしているのかも聞いていたのに、何も聞けなくなった。


そうしてとても難しい実験を成功させた。


それまでは縛られるのを嫌って、研究結果を企業に使わせたりもしなかった。
なのにこの件で、二人は自ら健太郎のお父様である結城財閥のご当主に、研究結果を持ち込んだ。
それがあの事件から五年後の事。


私の両親は結城研究所の主席研究員に就任して、以来製薬部門での新薬開発に取り組んで来た。
研究員になって新薬開発を始めてから二年後、治験が始まった。
治験での研究データを元に、更に改良を加えて。
そしてその結果が今日。
結城財閥の持つ製薬会社の新薬開発記念パーティーの場で世間に発表されて、臨床の場で実用化される。
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