解ける螺旋
まるで何かの物語でも読む様に、愁夜さんは淡々と説明してくれた。
そして、フッと、どこか自虐的な笑みを浮かべる。


「……結城と真美が出会わない世界も作った。
だけど俺はその世界に納得出来なかった。
なんでなのか自分でも考えて、やっと真美の表情の中に答えを見つけた。
……それは俺が知る限り、真美にとって初めての恋だったんだ。
真美が生きているだけでもいいと思ったのは、ただ俺の自己満足でしかなくて。
真美の幸せは他にあった。それに気が付いてしまったから。
いつしか俺の願いは変化して。
真美が生きて、幸せになれる世界を望むようになった」


愁夜さんの長い告白に、心を締め付けられていた。


真美さんだったんだ、と思った。
私や健太郎に酷い事をしても、愁夜さんの望む未来はいつも真美さんが幸せを掴む未来で。


そしていつも、その未来に私は不要だった――


「……奈月、君はね。生きていればいつも結城を好きになるんだ。
恋人同士でいるか、親同士の約束で婚約するか。
どっちにしても、神様が決めた運命なのかもね。
だから、神様に反して運命を変えようとしても無駄なのかもしれないとすら思った。
どんなに干渉したって、人の心を変えられる訳じゃない。
俺に出来るのは、ある過去の分岐点で違う未来を引き出す細工を加える事だけ。
その程度じゃ、結城も君も心は変わらない。
……だからね」


言葉を切って、愁夜さんは私を見つめた。
その薄い唇が紡ぎ出す言葉を、私はもう知っている。


それが運命なら。
壊せない物だと言うなら。


そうして。


――私を殺し始めたんだ。
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