解ける螺旋
約束。


いつ、誰と、どう交わされた約束なのか、お母さんは何も言わなかった。
だけどきっと二人に拒む事は出来ず、そして一方的な約束だったんじゃないかと思う。


それでもその約束に縋るしかなかった、と。
今の私は、そう推測出来る。


それがあの誘拐事件と関係があるのかはわからないけれど、あの事件の後の出来事だって事はわかってる。


そしてもしかしたら、だけど。
あの時誘拐犯は、私の両親にその約束を要求したんじゃないか。
私の命と引き換えに、絶対に失敗が許されない研究、実験を課したんじゃないか。


あの事件では身代金の要求はあっても、受渡しは実現しなかったと聞いた。
だってその前に私が二人の元に戻されたから。
二人は私がただ誘拐犯から解放されたと思っていて、逃げられない鎖に縛られ続けているのかもしれない。


だけど、実際に私が助かったのは解放されたからじゃない。
『あの人』が、助けてくれたからなのに。


――そう、『あの人』が。
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