解ける螺旋
「問題が俺だって言うなら大丈夫。
真美に会うのは俺が認めるから。
俺の妹なんだ。五年も付き合っておいて今更別れるなんて無責任だろ」

「あんたな……」


結城が深い溜め息をついた。
まあ確かに、俺が結城を振り回しまくってる事は認める。


過去も今も。
それは悪いと思うけど、このまま放っておいて結城と奈月を結婚させる訳にはいかない。


「……先生、さ。
やっぱり先生が望んだ未来って、真美が生きてる未来なのか?」


結城がソファに凭れて、俺を上目遣いに見る。


「何を今更」

「だよな。
……で、今この世界に戻って来て奈月と一緒にいるって事は、五年前の世界で先生は奈月の事好きだったって事だよな?
今ここで会ってるのも、先生が望んだ物の内の一つ」

「……」


直球で聞かれて言葉に詰まった。


俺が奈月に近付いたのは、結城から気持ちを遠ざける事だけが目的だった。
だから結城が見ていると知っていて奈月にキスをした時は、好きと言う気持ちがあった訳じゃない。
結城が真美と出会った時に、奈月の存在を理由に断る事が出来ない様に。
結城に直接何かをした訳ではないけれど、俺は結城の心を動かす意思を持って行動していた。


それを結城本人が知って、いい感情を持つ訳がない。
まして、実際にあの後真美と付き合って、五年の月日を過ごして来た結城には。


知ったらあの時混乱した奈月と同じ様に、苦しむんだろう。
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