解ける螺旋
もうすっかり事態を飲み込んだらしく、結城の態度は腹が立つ位不遜だ。


「……まあね。90%の出来ってとこかな」

「欲張ると限界がわからなくなるんじゃね?」

「さすがに過去から変えようとは思わないけど。
この世界で十分変えられる事だから、もうちょっと手加えておこうと思って」

「……強欲なヤツだな」


結城が眉をひそめた。


なんとでも言え。
これ以上他の世界を創らずに済むのなら、強欲にでも傲慢にでもなってやる。


これで全部が終わるなら。
それなら一度で全部、と思うのは強欲だとは思わない。
だから俺は結城に顔を向けて、言葉だけは結城に友好的に聞こえる様に努力した。


「今の君になら、真美を任せられる」

「……は?」


無表情で言い切る俺に、結城は目を丸くしてから溜め息をついた。


「すっごい『言わされてます』って顔。
……なあ、あんたは愁夜なのか? 先生なのか?
奈月と俺の婚約が騒がれて、話も聞かずに激怒して真美を転院させて、会わせてもくれなくなったのは愁夜じゃないか。
ご丁寧にアパートも引越してくれてさ。
真美も愁夜に言いくるめられて、電話も出てくれなくなるし。
愁夜も俺に勤務先絶対に教えてくれなかったし、このマンションの住所だって。
だからこっちはちゃんと決着つけて会いに行こうと思って、必死に居場所を探してたって言うのに。
……なのに先生は真美を俺に任せると。
ったく、人の気も知らないで。どこまで勝手なんだよ」

「あ、やっぱりそうなの?」


真美の転院の背景に俺がそんな風に絡んでたとは。
嫌な予感はしていたけれど、確かに俺ならその位の事をやりかねない。
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