解ける螺旋

命の恩人。
カッコいいヒーロー。


当時の私は健太郎にもそんな風に話したけれど、今の私はさすがに額面通りの言葉で説明は出来ない。


命の恩人だけど、もしかしたら違うのかもしれない。
当時の私は絶対の信頼を向けていた人だけど、もしかしたら危険な人なのかも知れない。
いつからか、私もそんな一般的な意見に流されていた。


それでも、『助けてくれた』事は確かだから。


あれから13年が過ぎて、やっと見つけたあの人は、姿も形も似すぎている別人。
捜す事は当の昔に諦めたけど、叶うならちゃんとお礼が言いたい。
樫本先生との出会いは、私のそんな気持ちを強めた。


そう、私が信じなければ、誰が信じると言うの。
『あの人』の声も温かい背中も、私しか証言出来ないと言うのに。