解ける螺旋
しゃがんだ私の目の前に、袋から溢れた何かがバラバラと落ちて来た。
幾つかは頭にも当たって、何気に痛い。


「あ、ごめん」


そんな無惨な状況にしておいて、樫本先生はやっぱり面白そうに笑っている。


「……もう、先生っ!
こんな荷物持ってるのに、どうして簡単に屈み込めるんですか!?
仮にも重力やら何やらを専門にしてる物理学の助手が」

「ごめんごめん。でもそれとこれとは話が別。
……相沢さんって反応が斬新で面白いって言われた事ない?」

「は?」


私の隣にしゃがみ込んだ樫本先生が、笑いながらそう言って私の顔を覗き込んで来る。


「え? ……ちょっ!」


いきなり顔が近くにあって、飛び退こうとして尻餅をついた。


「う、いったあ……」


顔をしかめて廊下に手を突くと、先生は堪え切れないと言う様に、吹き出して爆笑する。

なんだかものすごい恥ずかしくて、


「先生っ! 酷いです、そんなに笑わなくても」


真っ赤になって抗議したら、宥める様に頭をポンポンと叩かれた。


「子供じゃないんだから、止めて下さい!」


つい不機嫌になって手を振り払ってしまったけど、先生は気にした様子はなく、笑いながら散乱した荷物を拾っている。


「いや、子供子供。僕の顔にそこまで驚くなんて」

「お、驚きますよ、普通! いきなりあんな近かったら」


そう? と簡単に聞き返された。


――まさかと思うけど、先生は自覚ないのかな。


よく見たら、この散らばった物達もプレゼントや差し入れって類の物だってわかるのに。
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