解ける螺旋
「……先生、これ、学生から貰ったんでしょう?」

「そう。講義が終わった後、質問に答えてあげたらね」

「……ひょっとして、先生って天然ですか?」


質問に答えたお礼だと思われてるなら、このプレゼント達の立場がない。
だから眉をひそめてそう聞いたのに。
荷物を抱え直して立ち上がった先生が、また爆笑した。


さすがにあ然とした私に手を差し伸べてくれて、私はほとんど条件反射でその手に掴まった。


「ふふ。まさにパブロフの犬だね」


そう呟くと、強く腕を引いて私を立ち上がらせてくれる。


「あ、ありがとうございます」


犬扱いに少しだけモヤモヤしながらも、起こしてくれた事にお礼を言うと、


「天然じゃないよ」


そう短く言った先生が、私の手をギュッと握った。
え、と思わず手を引っ込めようとして、先生の手に力が入った。


「これでも自分がどういう人間かはわかってるつもり。
だけど相沢さんは意外と奥手みたいだから、こういう作りにしておいた方が警戒されない様な気がして」

「は?」


天使みたいに綺麗な顔をして笑ってるのに、先生の目は意地悪だった。


「いや、逆ナンなんてして来たから、どれだけ擦れた子なんだろうと思ったんだけどね。
そのつもりで関わったら、泣かせそうな気がしたから」

「な、何言ってるんですか!?」


なんだか物凄く意味深な事を言われた様な気がして、私は慌てて握られた手を引っ込めた。
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