主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
眩暈を感じてよろめいたが、ふと顔を上げると、息吹の視点は鵜目姫の視点に変わっていた。
目の前の華月は手を握ったまま離さず、また主さまにそっくりの顔が徐々に近付いてきたのに鵜目姫の身体はぴくりとも動いてくれない。
『おやめください、鬼八様に疑われてしまいます』
鵜目姫の感情が直接息吹に伝わってくる。
恐怖…
不安…
驚き…
――鬼八とそっくりの華月に親しみを感じながらも、動揺していた。
『あなたのような美しい姫ははじめて見た。…もっと話したい。駄目か?』
『だ、駄目です、もうお会いすることはありませんっ』
くるりと視点が変わり、鵜目姫が華月に対して背を向けた。
…背後からは拒絶されたことへの殺気めいたものを感じる。
主さまもそんな一面があった。
拒絶をすると余計に昂り、強引になる。
『…また会いに来る』
『駄目です、お止めください!』
必死に訴えかけて向き直ると華月の姿はすでになく、鵜目姫が呆然とした小さな声で呟いた。
『鬼八様…、鬼八様…!』
鬼八への恋心がどっと息吹の中に溢れ込んできた。
せつなくなって、怖くなって、身体を丸めてうずくまっていると――
『ただの野鳥だったよ。…鵜目姫…?鵜目姫、どうしたんだ?』
鬼八が駆け寄ってきて優しく肩を抱いてきた。
ものすごくほっとして視界がぼやけて鵜目姫が泣きはじめると、鵜目姫の中の息吹も目を真っ赤にして手で顔を覆った。
…完全に同調していた。
『さっき華月に会ったけど何も言わずに帰ってしまった。…鵜目姫、どうして泣いているの?』
『いいえ…なんでもありません鬼八様…』
頑なに答えずにいると鬼八がぎゅっと抱きしめてくれたので、息吹…いや、鵜目姫も強くしがみついた。
『早く鬼八様の妻になりたい…!本当の妻に…』
『鵜目姫…もうすぐだよ。すぐだからね』
――その頃主さまは…
力を与えたことで莫大な妖力を取り戻した天叢雲がもたらす狂気に苦しんでいた。
「う、ぅ…」
自分ではない誰かの記憶が天叢雲から流れ込んでくる。
誰かの記憶が…
目の前の華月は手を握ったまま離さず、また主さまにそっくりの顔が徐々に近付いてきたのに鵜目姫の身体はぴくりとも動いてくれない。
『おやめください、鬼八様に疑われてしまいます』
鵜目姫の感情が直接息吹に伝わってくる。
恐怖…
不安…
驚き…
――鬼八とそっくりの華月に親しみを感じながらも、動揺していた。
『あなたのような美しい姫ははじめて見た。…もっと話したい。駄目か?』
『だ、駄目です、もうお会いすることはありませんっ』
くるりと視点が変わり、鵜目姫が華月に対して背を向けた。
…背後からは拒絶されたことへの殺気めいたものを感じる。
主さまもそんな一面があった。
拒絶をすると余計に昂り、強引になる。
『…また会いに来る』
『駄目です、お止めください!』
必死に訴えかけて向き直ると華月の姿はすでになく、鵜目姫が呆然とした小さな声で呟いた。
『鬼八様…、鬼八様…!』
鬼八への恋心がどっと息吹の中に溢れ込んできた。
せつなくなって、怖くなって、身体を丸めてうずくまっていると――
『ただの野鳥だったよ。…鵜目姫…?鵜目姫、どうしたんだ?』
鬼八が駆け寄ってきて優しく肩を抱いてきた。
ものすごくほっとして視界がぼやけて鵜目姫が泣きはじめると、鵜目姫の中の息吹も目を真っ赤にして手で顔を覆った。
…完全に同調していた。
『さっき華月に会ったけど何も言わずに帰ってしまった。…鵜目姫、どうして泣いているの?』
『いいえ…なんでもありません鬼八様…』
頑なに答えずにいると鬼八がぎゅっと抱きしめてくれたので、息吹…いや、鵜目姫も強くしがみついた。
『早く鬼八様の妻になりたい…!本当の妻に…』
『鵜目姫…もうすぐだよ。すぐだからね』
――その頃主さまは…
力を与えたことで莫大な妖力を取り戻した天叢雲がもたらす狂気に苦しんでいた。
「う、ぅ…」
自分ではない誰かの記憶が天叢雲から流れ込んでくる。
誰かの記憶が…