主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
「主さまお願い。鬼八さんと鵜目姫さんが同じ場所に行けるのなら…鬼八さんを殺さないで」
「…息吹…」
「鬼八さんも鵜目姫さんも悪くないの。ただ愛し合ってるだけなのにまた離れ離れになるなんて可哀そうだよ…。主さまお願い」
「息吹姫…」
か細い声で名を呼んだ鬼八の腕に少しだけ触れながら主さまの前に立って見上げると、主さまは小さくはにかんだ。
「…天に昇ったらどうなる?」
『私たちの魂は浄化され、2度と転生はしません。鬼八様…あなたとだったらどこまでもついて行きます。だからもう、恨むのはやめて下さい』
鵜目姫が鬼八を諭してそっと抱き着くと…ようやく心底から安堵したような表情を浮かべた鬼八は大きく息をついた。
「…わかった。この身体を捨て、あなたと同じ場所に行く。華月の血の者よ…俺を見逃してくれ。俺も鵜目姫も…疲れた。安らぎたい」
「封印もせず、命を奪うのもやめろ、と?…約束できるのか?」
「主さまお願い」
また息吹から懇願され、息吹が袖を引っ張ってきたので動揺して慌てて振り払うと鬼八と鵜目姫が笑った。
「お前は華月じゃないし、息吹姫は鵜目姫じゃない。今さらながらそれに気が付いた。…頼む。鵜目姫と一緒の場所に行かせてくれ」
『息吹…天から見守っていますからね。華月は魂を歪め、転生すらできませんでした。その男も同じ運命を辿らないように、あなたが正して行くのですよ』
「はい。ずっと主さまの傍に居ます。私が死ぬまでずっとずっと」
――手を取り合った鬼八と鵜目姫の身体が発白に包まれ、家を出ると洞窟の入り口に立ち、笑顔を交わして階段を上るように天へと向かって歩いて行く。
安らいだその表情…
息吹は隣に立ち、瞳を細めて2人を見上げていた主さまの手をそっと握った。
「!」
「主さま帰ろ。みんなで幽玄町に帰ろ」
「息吹だ!息吹が出て来たぞ!」
百鬼たちが沸き返る。
自分たちの姫が無事であることに歓声を上げ、次々と押し寄せてくる。
…抱きしめて愛を耳元に吹き込みたかったが…今はやめておこう。
後でゆっくりと――
「…息吹…」
「鬼八さんも鵜目姫さんも悪くないの。ただ愛し合ってるだけなのにまた離れ離れになるなんて可哀そうだよ…。主さまお願い」
「息吹姫…」
か細い声で名を呼んだ鬼八の腕に少しだけ触れながら主さまの前に立って見上げると、主さまは小さくはにかんだ。
「…天に昇ったらどうなる?」
『私たちの魂は浄化され、2度と転生はしません。鬼八様…あなたとだったらどこまでもついて行きます。だからもう、恨むのはやめて下さい』
鵜目姫が鬼八を諭してそっと抱き着くと…ようやく心底から安堵したような表情を浮かべた鬼八は大きく息をついた。
「…わかった。この身体を捨て、あなたと同じ場所に行く。華月の血の者よ…俺を見逃してくれ。俺も鵜目姫も…疲れた。安らぎたい」
「封印もせず、命を奪うのもやめろ、と?…約束できるのか?」
「主さまお願い」
また息吹から懇願され、息吹が袖を引っ張ってきたので動揺して慌てて振り払うと鬼八と鵜目姫が笑った。
「お前は華月じゃないし、息吹姫は鵜目姫じゃない。今さらながらそれに気が付いた。…頼む。鵜目姫と一緒の場所に行かせてくれ」
『息吹…天から見守っていますからね。華月は魂を歪め、転生すらできませんでした。その男も同じ運命を辿らないように、あなたが正して行くのですよ』
「はい。ずっと主さまの傍に居ます。私が死ぬまでずっとずっと」
――手を取り合った鬼八と鵜目姫の身体が発白に包まれ、家を出ると洞窟の入り口に立ち、笑顔を交わして階段を上るように天へと向かって歩いて行く。
安らいだその表情…
息吹は隣に立ち、瞳を細めて2人を見上げていた主さまの手をそっと握った。
「!」
「主さま帰ろ。みんなで幽玄町に帰ろ」
「息吹だ!息吹が出て来たぞ!」
百鬼たちが沸き返る。
自分たちの姫が無事であることに歓声を上げ、次々と押し寄せてくる。
…抱きしめて愛を耳元に吹き込みたかったが…今はやめておこう。
後でゆっくりと――