主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
“息吹は人間じゃないのか?”
主さまと晴明から今までの経緯の説明を受けた妖たちは口々にそう囁いて顔を見合わせ、幸せそうに茶を啜っている息吹を盗み見た。
「…とりあえず鬼八の件は決着がついた。百年に1度の封印ももうしなくて済む。だから俺は…その…」
「息吹を嫁にする、と?」
隣りに座っていた晴明が含み笑いを浮かべてそう揶揄すると、真に受けてまた顔が赤くなった主さまは晴明の身体が傾くほど強く肩を押した。
「うるさいぞ!」
「華月が課してきた宿命はそなたの代からもう背負わずに済むのだ。人間を嫁にしても誰も文句は言わぬ。まあ、私は言うが」
「…俺は……その…」
妖たちが“息吹を嫁にする”と主さまが口にするのを今か今かと待ち受けている中、状況の読めていない息吹は隣にくっついていた雪男の袖を引っ張り、鬼八と鵜目姫の愛を瞳を輝かせながら説明していた。
「すっごい純愛だったの。鬼八さんは悪鬼なんかじゃなかったし、誤解が解けて本当によかった」
「…まあそうだけど…晴明がお前の身体から鵜目姫を追い出さなかったらどうなってたんだよ。わかってんのか?」
「でも主さまが助けてくれたと思うの。ね、主さま。そうだよね?」
「あ、ああ。…こっちを見るな!」
信頼の眼差しで息吹が見つめてくるその純粋な瞳に耐えきれなくなった主さまがくるりと背を向けて縁側の方を向いてしまうと妖たちが一斉にため息をついた。
「これだから主さまは駄目なんだよなあ」
「そんなんで息吹を嫁になんか…」
「嫁?」
「!解散だ、出て行け!」
怒られても、親愛を込めながら口々と文句をいいつつ妖たちが出て行くと、晴明は雪男の手を無理矢理引っ張って立たせると出入り口へと向かった。
「今宵はゆっくり過ごせ。ただし眠る時は私も一緒だからな。息吹、何かあったら大声で叫ぶのだぞ」
「?はい、わかりました」
振り向かず、耳まで真っ赤な主さまに忍び笑いを漏らしつつ出て行くと、息吹と2人きりになってしまった主さまは目を合わすことができずにずっと外を見ていた。
「ねえ主さま、お話しようよ」
「…」
ど緊張。
主さまと晴明から今までの経緯の説明を受けた妖たちは口々にそう囁いて顔を見合わせ、幸せそうに茶を啜っている息吹を盗み見た。
「…とりあえず鬼八の件は決着がついた。百年に1度の封印ももうしなくて済む。だから俺は…その…」
「息吹を嫁にする、と?」
隣りに座っていた晴明が含み笑いを浮かべてそう揶揄すると、真に受けてまた顔が赤くなった主さまは晴明の身体が傾くほど強く肩を押した。
「うるさいぞ!」
「華月が課してきた宿命はそなたの代からもう背負わずに済むのだ。人間を嫁にしても誰も文句は言わぬ。まあ、私は言うが」
「…俺は……その…」
妖たちが“息吹を嫁にする”と主さまが口にするのを今か今かと待ち受けている中、状況の読めていない息吹は隣にくっついていた雪男の袖を引っ張り、鬼八と鵜目姫の愛を瞳を輝かせながら説明していた。
「すっごい純愛だったの。鬼八さんは悪鬼なんかじゃなかったし、誤解が解けて本当によかった」
「…まあそうだけど…晴明がお前の身体から鵜目姫を追い出さなかったらどうなってたんだよ。わかってんのか?」
「でも主さまが助けてくれたと思うの。ね、主さま。そうだよね?」
「あ、ああ。…こっちを見るな!」
信頼の眼差しで息吹が見つめてくるその純粋な瞳に耐えきれなくなった主さまがくるりと背を向けて縁側の方を向いてしまうと妖たちが一斉にため息をついた。
「これだから主さまは駄目なんだよなあ」
「そんなんで息吹を嫁になんか…」
「嫁?」
「!解散だ、出て行け!」
怒られても、親愛を込めながら口々と文句をいいつつ妖たちが出て行くと、晴明は雪男の手を無理矢理引っ張って立たせると出入り口へと向かった。
「今宵はゆっくり過ごせ。ただし眠る時は私も一緒だからな。息吹、何かあったら大声で叫ぶのだぞ」
「?はい、わかりました」
振り向かず、耳まで真っ赤な主さまに忍び笑いを漏らしつつ出て行くと、息吹と2人きりになってしまった主さまは目を合わすことができずにずっと外を見ていた。
「ねえ主さま、お話しようよ」
「…」
ど緊張。