主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
縁側で脚をぷらぷらさせながら唐から持ち帰ってきた饅頭を口にした幸せそうな表情の息吹に晴明と銀が瞳を細めた。
「なるほどなるほど、可愛いな」
「銀…そなたの毒牙にかけるわけにはいかぬ。この子はまだ子供なのだから妙な言動は許さぬぞ」
「お前が親馬鹿になるとは思っていなかったぞ。元は捨て子だったとか。詳しい経緯を話せ」
――銀は母の葛の葉の兄であり、そして幽玄町の覇権を争って主さまと戦った経緯がある。
実力は折り紙つきで、百鬼の中には銀側についた者も在ったが…主さまはその妖たちを全て手にかけ、反旗を翻した者たちの哀願を一切受け入れなかった。
あの頃の主さまは冷徹で…
かつての華月となんら変わりない。
だが主さまは変わったのだ。
息吹を拾ったことにより、やわらかくなり、頑なだった魂を和らげた。
「…話してもいいが、我が邸にて息吹が寝た後ならいい。あと息吹は…人ではないかもしれぬ。それだけは言っておく」
「そうか、だから少し違う匂いがするんだな。十六夜は息吹を妻にしようとしているのか?」
「さあなあ、どうだろうか。直接聞いてみては?」
「あいつが俺に簡単に本音を語ると思うか?」
晴明と銀が親しげに会話を交わしている間、息吹は饅頭をひとつ残して包み紙に包むと、縁側の方の主さまの部屋に通じる障子をそーっと開けて、そーっと饅頭を部屋の中に差し入れた。
「主さま甘いもの好きだもんね、私お茶淹れてきます」
そんな献身的な息吹の態度もまさに主さまに好意を抱いているように見えた銀は饅頭を頬張りながら耳をぴょこぴょこと動かし、台所へ消えてゆく息吹の背中を見つめた。
「限りなく人に近いと思うが、もし夫婦になったとして、息吹が先立ったら十六夜はどうなると思う?」
「そなたと戦っていた頃の十六夜に戻る。十六夜の安らげる場所は息吹の隣だけだ。ああ面倒なことになりそうで頭が痛い」
「人でなければいいのだろう?」
「なに?」
おかしなことを言った銀の横顔は悪戯好きの少年のような笑顔に溢れていて、さらにいやな予感がした晴明は小さなため息をついた。
「なるほどなるほど、可愛いな」
「銀…そなたの毒牙にかけるわけにはいかぬ。この子はまだ子供なのだから妙な言動は許さぬぞ」
「お前が親馬鹿になるとは思っていなかったぞ。元は捨て子だったとか。詳しい経緯を話せ」
――銀は母の葛の葉の兄であり、そして幽玄町の覇権を争って主さまと戦った経緯がある。
実力は折り紙つきで、百鬼の中には銀側についた者も在ったが…主さまはその妖たちを全て手にかけ、反旗を翻した者たちの哀願を一切受け入れなかった。
あの頃の主さまは冷徹で…
かつての華月となんら変わりない。
だが主さまは変わったのだ。
息吹を拾ったことにより、やわらかくなり、頑なだった魂を和らげた。
「…話してもいいが、我が邸にて息吹が寝た後ならいい。あと息吹は…人ではないかもしれぬ。それだけは言っておく」
「そうか、だから少し違う匂いがするんだな。十六夜は息吹を妻にしようとしているのか?」
「さあなあ、どうだろうか。直接聞いてみては?」
「あいつが俺に簡単に本音を語ると思うか?」
晴明と銀が親しげに会話を交わしている間、息吹は饅頭をひとつ残して包み紙に包むと、縁側の方の主さまの部屋に通じる障子をそーっと開けて、そーっと饅頭を部屋の中に差し入れた。
「主さま甘いもの好きだもんね、私お茶淹れてきます」
そんな献身的な息吹の態度もまさに主さまに好意を抱いているように見えた銀は饅頭を頬張りながら耳をぴょこぴょこと動かし、台所へ消えてゆく息吹の背中を見つめた。
「限りなく人に近いと思うが、もし夫婦になったとして、息吹が先立ったら十六夜はどうなると思う?」
「そなたと戦っていた頃の十六夜に戻る。十六夜の安らげる場所は息吹の隣だけだ。ああ面倒なことになりそうで頭が痛い」
「人でなければいいのだろう?」
「なに?」
おかしなことを言った銀の横顔は悪戯好きの少年のような笑顔に溢れていて、さらにいやな予感がした晴明は小さなため息をついた。