主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
息吹を抱っこして屋敷に戻ると、それを目敏く見つけたのは縁側でのんびりくつろいでいた晴明と銀だった。
「おや…、上手くいったようだな」
「なに、お前は十六夜に嫁がせるつもりなのか?」
「それを息吹が望むなら。あの子には幸せになってほしいのだ。生い立ちがかわいそうな子だからね」
銀の耳がぴょこぴょこと動き、主さまがふわりと庭に下り立つと、意地悪2人組は無言で主さまを見つめて圧力をかけた。
「…なんだ」
「“なんだ”じゃない。報告せよ。接吻以上のことは許さぬと言ったはずだぞ」
「ち、父様!そ、そんなことしてませんっ」
「息吹、踏みとどまった方がいいぞ。そいつは意外と色ぼけして…」
「妙なことを吹き込むな。俺は色ぼけなんかしてない」
…何故かすでに銀にもばれていたようだったが、駆け寄ってきた雪男が目に入ると慌てて腕から下ろしてもらい、手を振った。
「雪ちゃんっ」
「息吹!どこ行ってたんだよ、心配したんだぞ!」
「ちょっと主さまとお散歩してたの。心配かけてごめんね」
本当に心配してくれていたのか、雪男の真っ青な切れ長の瞳は安堵で和らぎ、息吹の頭を撫でた。
「何もないならいいんだ。…ちょ、なんだよにやにやすんなよ!」
同じような顔をしている晴明と銀がにやつき、主さまは相変わらず無表情のまま自室へと消えて行った。
息吹はそれを目で追いかけつつ、平静を装って雪男の手を引いた。
「雪ちゃん、お花にお水あげよ。手伝ってくれる?」
「ん、いいぜ。番傘取って来る」
暑さに弱い雪男は日中番傘を差さないと溶けてしまう。
屋敷の奥に消えて行くと、晴明は優しい瞳と声で息吹に呼びかけた。
「願いが叶ったようでほっとしたよ。これで気苦労がひとつ消えたというものだ」
「だがお前のことだ、十六夜をいじめ倒すんだろう?」
「当然だ。嫁入りの日までは手出し無用。毎日夢に出る位言い聞かせてやらねば」
「あ、あの、父様っ、銀さん!」
口止めをしなければ。
焦る息吹をしり目に2人は結束を固めていた。
「おや…、上手くいったようだな」
「なに、お前は十六夜に嫁がせるつもりなのか?」
「それを息吹が望むなら。あの子には幸せになってほしいのだ。生い立ちがかわいそうな子だからね」
銀の耳がぴょこぴょこと動き、主さまがふわりと庭に下り立つと、意地悪2人組は無言で主さまを見つめて圧力をかけた。
「…なんだ」
「“なんだ”じゃない。報告せよ。接吻以上のことは許さぬと言ったはずだぞ」
「ち、父様!そ、そんなことしてませんっ」
「息吹、踏みとどまった方がいいぞ。そいつは意外と色ぼけして…」
「妙なことを吹き込むな。俺は色ぼけなんかしてない」
…何故かすでに銀にもばれていたようだったが、駆け寄ってきた雪男が目に入ると慌てて腕から下ろしてもらい、手を振った。
「雪ちゃんっ」
「息吹!どこ行ってたんだよ、心配したんだぞ!」
「ちょっと主さまとお散歩してたの。心配かけてごめんね」
本当に心配してくれていたのか、雪男の真っ青な切れ長の瞳は安堵で和らぎ、息吹の頭を撫でた。
「何もないならいいんだ。…ちょ、なんだよにやにやすんなよ!」
同じような顔をしている晴明と銀がにやつき、主さまは相変わらず無表情のまま自室へと消えて行った。
息吹はそれを目で追いかけつつ、平静を装って雪男の手を引いた。
「雪ちゃん、お花にお水あげよ。手伝ってくれる?」
「ん、いいぜ。番傘取って来る」
暑さに弱い雪男は日中番傘を差さないと溶けてしまう。
屋敷の奥に消えて行くと、晴明は優しい瞳と声で息吹に呼びかけた。
「願いが叶ったようでほっとしたよ。これで気苦労がひとつ消えたというものだ」
「だがお前のことだ、十六夜をいじめ倒すんだろう?」
「当然だ。嫁入りの日までは手出し無用。毎日夢に出る位言い聞かせてやらねば」
「あ、あの、父様っ、銀さん!」
口止めをしなければ。
焦る息吹をしり目に2人は結束を固めていた。