主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
夜が更けると、主さまが庭に下り立った。

それを合図にさっきまで騒いでいた百鬼も主さまの下へと集まり、皆が口々に息吹に声をかけた。


「じゃあまたな、いい子にしてるんだぞ」


「いつもいい子にしてるもんっ」


明日は晴明から屋敷を出てはいけないと言われているので、息吹は主さまを目に焼き付けようと瞬きもせずにじっと見つめていた。


「…行くぞ」


「主さま行ってらっしゃい。みんな、気を付けてね!」


――百鬼夜行は危険を伴うとも聴いている。

他国の妖が侵入してきた場合…

なりを潜めている大物の妖が暴れ出した場合…

統治している主さまの許しもなく、大きな諍いが起きた場合――


鎮圧に乗り出してゆくのは、主さま率いる百鬼夜行だ。


怪我をして帰ってくるかもしれないし、命を落とす可能性もあるだろう。

そんな主さまと百鬼たちを毎夜見送り、毎朝迎える日がいつかやってくる――


「…そんな顔をするな」


一言呟いて空を駆けあがってゆく主さまと百鬼に息吹が大きく手を振り、留守を任されている山姫と雪女と雪男が代わる代わる息吹の肩を叩いた。


「さ、平安町に戻りな。晴明、頼んだよ」


「そなたも一緒に引き取ってもよいが、どうだ?」


「な…っ、ふざけるんじゃないよ!さっさと帰んな!」


にこにこにやにやしている息吹の頭を軽く叩くと奥に引っ込んでしまい、牛車までついて来てくれた雪男が御簾を上げてくれながら頬をかき、はにかんだ。


「よく似合ってる…と思う。時々俺の前でつけてくれたら嬉しいんだけど」


「うん、雪ちゃんありがとね。みんなに誕生日祝ってもらえるなんて…すっごく嬉しかった。ありがとう」


「…息吹に誕生日を、って言い出したのは主さまなんだ。お前と主さまの誕生日が同じ日なのは癪だけど、毎年みんなで祝おうな」


「うんっ」


御簾が下がると牛車が動き出し、銀の手が伸びて息吹を膝の上に乗せると、簪に触れた。


「粋なことをする男だな。十六夜から何か贈ってもらったか?」


「ううん、でも綺麗なお花畑を見せてもらったよ」


…主さまが?


2人が同時に噴き出した。
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