主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
息吹が晴明の膝で寝入ってしまい、晴明と銀は飽きもせずに息吹の寝顔を見つめていた。

そして同時に――


「葛の葉に少し似ている」


「母上の面影がある」


同じようなことを思っていたことを知って同時に噴き出すと、盃を傾け、満月を見上げた。


「俺も十六夜も葛の葉の死に目に会えなかった。お前は幼く、見つかれば殺される恐れがあった。しかし…俺でも十六夜でもなく、この娘が葛の葉を救ったとはな」


「帝に身を捧げる覚悟だった。母上を救ったのは息吹だが、息吹を救ったのは…十六夜だ」


「ふむ。あいつは最初から息吹を食い物として見てはいなかったようだな。鬼族の祖の者が人と交わるか。いや…神の血筋の者とか」


「その辺がよくわからぬ。少しでも力が顕現するならば…人より長く生きることもあるかもしれぬ。息吹をよく調べてみたいのだが…」


「この助平が。仮にも娘をよく調べたいだと?やめておけやめておけ」


そう言うと銀は腰を上げ、庭に下り立った。

庭の人魚が艶めかしく手招きをし、妖艶な笑みで人魚の頬を撫でると出入り口に向かって歩きながら手を上げた。


「夜風にあたってくる。息吹を襲うなよ」


「父が娘を襲うものか」


…本当に自分の娘なら良かったのに――

息吹に抱く思いはただ純粋にそれのみで、妖の王の手を選んだ息吹が今後歩く茨のような道を歩く間に少しでも血を流すことのないような道にしてやりたい。

晴明は息吹を抱き上げると部屋まで運んでやった。


――そして銀は…幽玄橋の前で面白いものと対面していた。


「なんだこれは」


「見ての通りだ。…どうする、主さまに言うか?」


赤鬼と青鬼が困り果てた顔で身を縮めるとそれを抱き上げた。

だが銀は首を振り、赤鬼の大木の幹のような腕からそれを奪うと、じっくり眺めて面白い玩具を見つけた子供のように笑った。


「いや、これは俺が預かっておこう。後で十六夜には報告しておく」


そして幽玄町へと入り、それを見下ろして…にやりと微笑んだ。


「さて面白いものを見つけた。どうやって驚かせようか」


そして闇へと消えてゆく――
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