優しい手①~戦国:石田三成~【完】
漬物に味噌汁、米に…そして見たこともないはんばーぐという食べ物。


それを前にして三成は固まっていた。


「…これは?」


「ハンバーグ!本当はオリジナルソース作りたかったんだけど材料が足りなくてケチャップだけになっちゃったけど美味しいよ食べてみて!」


――相変わらず言っていることの大半が意味不明のことばかりだったが、三成は隣に座る大山という家臣に目を遣ると…渋々といった感じだったが頷きながら大山は唸った。


「はじめて口にする味でしたが…び、美味でございました」


「…そうか」


毒味をすると言って聞かなかった大山が太鼓判を押したので、三成はそれを迷わず口にした。

…目の前では桃が瞳を輝かせながら見ていたので非常に食べづらかったのだが…

大山のようにはじめて食したはんばーぐの味に、三成の瞳が一瞬驚いたのを桃は見逃さなかった。


「美味しい?美味しいでしょ?それねえ、お姉ちゃんたちにも大好評なんだよー」


「美味い。…そなたは何人兄弟なのだ?」


私情に踏み入った三成を大山は止めようとしたが…三成は諫言を聞く相手ではない。黙ってその場から立ち去ると、桃が膳を三成の隣に寄せると、またもや隣に座った。


「5人姉妹なの。お父さんとお母さんは…居ないんだけど……」


急に口を濁した桃に対して三成は聞いてはならないことを聞いてしまったのだと反省し、潔く頭を下げた。


「すまぬ、余計な口出しをした」


「ううん、いいんだよ!それより三成さん、今日の予定は?」


「城へ上がらなくては。町へは大山に案内させよう。何をしに行くのだ?」


「お買物とー、あと探してるものが見つからないと帰れないから…あちこち見て回って来るね」


そう言い、美味しそうに米を口に放り込んでいる桃を見ていると、何故か三成は日々荒む心が洗われていくような不思議な感覚にとらわれた。


「今日は早めに帰る。そなたの時代の話をまた聞かせてほしい。……あー…、そなたのことは…何と呼べばいいのだ?」


「へ?桃でいいよ!桃姫…とか呼んでくれちゃってもいいよ!」


ウィンクをした桃に対して、三成は何故か赤面しながら乱暴に米を口に放った。
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