優しい手①~戦国:石田三成~【完】
肩を震わせる桃に一同はかける言葉を失って一様に黙り込んだ。


ただ一人謙信は…


“かける言葉を失った”というよりも、“その話に興味がない”と言わんばかりに席を立ち、部屋から離れる。


無礼な態度ではあったが、謙信はいつも桃が悩んだりする時は相談に乗ることがない。


ただ黙ったまま、傍に居てくれる。


「…私…自分の部屋に戻ってるね…。ごめんなさい」


「…落ち着いたら教えてくれ。桃…姉御と話ができてよかったな」


――当たり障りのないように三成が肩に手を置いて指先で撫でてくれて、なんとかはにかみながらも応え、部屋から出る。


今の今まで黙っていた政宗が小十郎にひそり、と声をかけた。


「あの飴色の石…見覚えがないか?」


顎に手を当てて考え込む政宗に小十郎が少し考えながら頷いた。


「はい。あの石によく似たもの…我が奥州にございまする。確か殿のお部屋にいつからかあったとか…」


「そうだ。あの石だ!妙に不思議な力を感じて捨てられずに未だに俺の部屋にある。あれは姫縁のものであったか!」


――由々しき事態に発展してきた。


越後に桃の親御が居るかもしれず、そして奥州に桃の親御が元の時代に戻る時に必要な石の欠片がある…


「そうか…姫の親御が見つかり、あの石を俺が返せば…姫は、戻ってしまうのか。では俺が返さなかったら?」


――男たちは顔を見合わせた。

三成は先ほど同じようなことを考えてしまって、桃が“絶対に帰るから”と言った時――胸が張り裂けそうな思いになった。


動揺が動揺を呼び、さらに沈黙が降りる。


そんな中、一人マイペースだったのは、謙信だった。


縁側を歩いて部屋に向かっていると、後ろから誰かが歩いてくる気配がして振り返る。


…何故か桃が後ろを歩いていて、それを気付いていながらも立ち止まらずに自分の部屋の前に立ち、襖に手をかけるとようやく声をかけた。


「私に何か用かな?」


「…ううん、別に…」


「そう?でもここは私の部屋の前だよ?中に入りたいの?」


――今にも泣きそうな顔になったので意地悪するのをやめて襖を開けた。


「お入り」

< 144 / 671 >

この作品をシェア

pagetop