優しい手①~戦国:石田三成~【完】
その気になればこの時代の天下を獲れた男からの求愛――


揺れないわけがなく、

傷心に身を焦がしていた桃にとって謙信の意外な慰めは効き過ぎた。


「私…帰るんだよ!?」


「そうだね、でも違う選択肢があることにも気付いてほしいな」


最初のうちは優しく重なっていた唇が…

だんだんエスカレートしてきて、舌と舌がもどかしげに絡まる。


涙に暮れながらも思った。…時折全く違う自身をさらけ出す謙信の魅力は、“掴み所のない男”。


常にゆったりとしていて言葉にも棘の含まれたことがない物言い…


政宗が着せた羽織に手をかけ、はじめてまじまじと見る桃の世界の下着にたどり着く。


「ああ、これは難敵だな…。もっとよく見せてくれれば嬉しいんだけど」


唇はほとんど離れない。


桃の息が上がりはじめても止める気配はなく、ひたすらキスは繰り広げられる。


「謙信さ、ん…っ、それ、触らないで…っ!」


「これのこと?ああ、こうすればいいのか」


――背中側にはホックがあり、

観察しても外し方を見出だせなかった謙信は、驚くほどに柔和な笑みで桃と見つめ合ったまま…触れた。


「!や、や…っ!」


「姫、もう全て見てしまったから諦めなさい。でもこれじゃ私ばかり良い思いをしているね…じゃあこうしようか」


「…!!!」


――右手を取られ、導かれた謙信の身体の部分は激しい鼓動を打つ固い胸。


その感触と謙信が笑みながら反応を待っていることで、一気に顔色を変えた桃は自分の胸を隠すことも忘れてしまっていた。


「私だって緊張してるんだよ」


「け、け、け、謙信さん!?」


「だからというわけではないけれど…触るからね?」


「え!?」


…胸に触れてきたのは手ではなく…謙信の唇だった。


「……んぅっ!」


「甘い香りがするね。姫…今夜は私と…過ごさない?」


「や、謙信さん、変になっちゃう、やめて…っ!」


「止めないよ。私の顔をよく見てごらん。冗談などではないからね」


――魔性の男、上杉謙信。


本領発揮の謙信にただ流される。
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