優しい手①~戦国:石田三成~【完】
夜になり、

謙信と兼続、政宗と小十郎、幸村、そして桃と三成が一堂に会して夕餉を摂った。


とにかく気恥ずかしくて、謙信とはまともに視線を合わせることすらできない。


また謙信もそれに気づいていていつつ何も言わずに微笑んでいた。


「殿!尾張の米も馬鹿にはできませぬな!もちろん越後の米が一番ですが!」


「そうだね、ああ早く戻りたい、みんなには怒られるんだろうけど」


「仙桃院様がきっとお庇い下さいますれば!桃姫、越後は良い所です。長くご逗留くださいませ」


――一瞬謙信と目が合った。


ふっと笑って、瞳を伏せたその仕草にぞくりとしてしまう。


月のような静けさ――


妖艶でいて、静謐の男。


またぐらぐらする心を叱咤して、はらはらしっぱなしの幸村に桃が声をかけた。


「幸村さん、お願いがあるんだけど」


「はっ、何なりと!」


「あのね、今日…一緒に寝てほしいの」


「畏まりまし………、えぇえ!?」


素っ頓狂な声を上げた幸村の手から箸が転げ落ちる。


だが桃は必死の形相で幸村に詰め寄るとその手を握った。


「一人じゃ眠れないから…お願い!」


「み、三成殿と…」


「ううん、今日は幸村さんと寝たいの!お願い!」


――願ってもないことだが…


政宗の突き刺さるような視線、
そして納得のいってない表情だが何も言わない三成、


無関心そうに見える謙信…


「桃姫、俺を差し置いて幸村を選ぶとはどういう了見だ?」


「え?三成さんがそうしろって…」


「うーん、それはおかしいよね?」


――ようやく謙信が会話に入ってきた。


柱に寄りかかり、徳利から盃に酒を注ぎながらにっこりと桃に笑いかけ、提案した。


「皆で一緒に寝ればいいんじゃない?そうすれば平等でしょ?」


「おお殿、それは良いご提案ですな!どうだ皆の衆、桃姫に関しては抜け駆け禁物ということで!」


…何となくチャンスを逃してしまって幸村は一瞬肩を落としたが、よくよく考えれば桃と同じ部屋で寝れるのだ。


「せ、拙者は賛成です」


桃も笑顔で頷いた。
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