優しい手①~戦国:石田三成~【完】
出て行った時とはうってかわって意気消沈している桃に家臣団は気を揉んだが…


城下町から戻って来た4人は足早に謙信の自室へ入って人払いをすると、桃が落ち着くまでひたすら時間をかけた。


「…ごめんなさい、もう大丈夫です」


そう言えるようになるまで約30分。

その間、桃の両隣には謙信と三成が座り、桃の右手と左手をそれぞれが握って、膝の上の両親からの手紙を見つめる。


「じゃあ読んでみてごらん」


かさり、と手紙を開いた瞬間、驚きに目を見張った。


『桃へ』


自分の名前が書いてあり、また自分あての手紙がぶるぶると手が震える。

だが懸命に手紙に目を落とした。



『桃へ。

お父さんたちはオーパーツを回収するために戦国時代へ来たけど、その時に石が割れてしまって戻れなくなってしまいました。
そして石を捜しながら旅をするうちにお父さんたちはミスをしてしまって、未来からやってきたことを知られてしまいました。

お父さんたちを狙っているのは…織田信長です。

今は一番安全と思われる越後で目立たないように暮らしています。
いざとなれば、義を慮る上杉謙信に助けを求めます。歴史が変わってしまうけど、お父さんたちは帰りたいんです。元の時代へ。

特に桃に会いたい。

もし…もし、お父さんたちを捜してくれるんだとしたら、それは桃だと信じています。

お転婆さん、もしこの手紙を見ることがあって、お父さんたちがここに居なかったら…

お父さんたちは、織田信長に捕らわれているでしょう。

助けに来てくれ、とは言わない。お父さんたちは自分たちでなんとかしてみせます。だから早く元の時代に戻ってください。

桃、愛しているよ』



――尾張の織田信長…

最強と言われながら本能寺で命を落とすはずだった信長は生きていて、そして両親は尾張に…


「戻らなきゃ。尾張に…!」


「桃、落ち着きなさい。手紙の内容を私たちに教えてもらえないかな」


手紙の中には謙信に助けを求めるかもしれないと書いてあり、桃は唇を震わせながら声に出して読んだ。


…みるみる2人の表情が曇っていった。
< 351 / 671 >

この作品をシェア

pagetop