優しい手①~戦国:石田三成~【完】
下着だけの姿にされてしまった桃の身体を三成の視線が撫でてゆく。


月明かりのせいで三成の表情がよく見えて、あまりに突然の出来事に桃は抵抗することも忘れてしまっていた。


「…抱いていいんだな?」


低く甘く、少しかすれたその声に、桃はこの時はじめて三成のことを“男”として意識した。


「や、三成さん、こんなの駄目だよ…っ、好きな人とじゃないとやだよ…!」


「では俺を好きになれ」


首筋に顔を埋められて強く吸われ、桃は小さく悲鳴を上げながら覆い被さる三成の胸を押した。


「どうせ酔ってるんでしょ?忘れちゃうんでしょ!?」


腕を掴んだまま離してくれずにそのまま抱き寄せられて、また口から心臓が出そうな思いになりながら身をよじった。


「帰らないと約束してくれ。でないと…このまま抱く」


顔を上げるとその瞳は真剣な光が宿り、酔っているのかそうでないのかも桃はわからなくなってきた。


「三成さんは…私のこと好きなの?私はオーパーツを見つけて歴史を正しく戻して帰らなくちゃ…」


「そなたは俺にとって大切な女子だ。それでは駄目なのか?」


――ブラに手がかかった。
誰にも触られたことがなく、まさかはじめて触った男が三成だとは…


「これは…どうすれば外れるんだ?」


この時代にブラは存在していないので不思議そうに首を傾げた三成の隙をついてその身体を突き飛ばすと、桃は浴衣を身体に巻き付けて立ち上がった。


「酔ってない時にもう一度言って!そしたら…信じるから!」


ただ静かにこちらを見つめている三成から逃げるように部屋から飛び出すと廊下を走り、幸村が借りている部屋の襖を叩いた。


「幸村さん…起きてる…?」


「え…っ、桃殿!?」


すぐに襖が開いて驚いた表情をした幸村の顔を見た時桃はホッとしてその場に座り込んだ。


「も、ももも桃殿、その恰好は…!?その…あちこち見えて…」


「ごめん幸村さん…今日…泊まってっていい?お願い、今日だけでいいから」


――幸村の手から持っていた本が落下した。

顔を上げると…


幸村の顔が真っ赤になっていて、桃は少しだけ安心できて、笑った。
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