優しい手①~戦国:石田三成~【完】
隣ですやすやと眠っている桃の寝顔を見つめながら、どうしてこんなにも家康と自分の接触を避けたがっているかを考えていた。


きっと、自分は家康に殺されたのだろう。


…ただそれ以前に、天下は誰が獲ったのか?

秀吉か?家康か?それとも…謙信なのか?


「俺は…殺されたのか」


――桃は全てを知っている。

こうしてこの時代に現れなければ、史実通りに殺されたのだろう。


家康は常に誰かに寄生して生きてきた。

天下が転がり込む位置を狙い、信長の手先となっていた者があっさりと鞍替えして謙信の側についたのは、謙信が天下を獲ると思っての思惑だろう。


「…あの男なら…天下獲りは可能だが…」


だが謙信には全くその気がない。

もっぱら手に入れたいと思っているのは、桃のことだけなのだろう。


「三成さん…?まだ起きてるの…?」


夢現に胸に抱き着いて来て、謙信たちと出会わなかった頃は毎夜こうして亡霊に怯える桃を抱きしめて眠るのが日課になっていたことを思い出して苦笑した。


「三成さん…?」


「何でもない。そなたと床を共にするのが嬉しくて眠れぬだけだ」


ぽろっと出た本音に桃の瞳がぱっちり開いてしまって、慌てて訂正しようとしたのだが言葉が出て来ずに頬を赤らめた三成は、桃から背を向けた。


「また照れちゃったの?三成さん、こっち向いてよ」


「い、いい!もう寝る!そなたも早く寝ろ!」


――しばらく何の反応もなかった桃がひしっと背中に抱き着いて来てフリーズしてしまうと、桃も同じことを考えていたのか、出会った頃のことを口にした。


「最初はすっごく冷たくされてどうしようかと思ってたけど…三成さんって私の時代で言う“ツンデレ”なんだよ。すっごく流行ってるんだから」


「つ、つん…?なんだそれは」


「つんつんしてて、好きな女の子の前だとでれっとしちゃう男の人のこと」


改めてそう分析されるとさらに恥ずかしくなって桃を見ることができず、とりあえず否定した。


「でれでれなどしてないっ」


「つんつんは否定しないんだ?」


ああ言えばこう言う。


だが桃とのそんなやりとりは、嫌いではなかった。
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