優しい手①~戦国:石田三成~【完】
「今日は三成さんと寝ます。謙信さん…いいよね?」


「そんなに家康が気にかかるのなら他の部屋に隔離させるけど」


謙信はいつも桃に選択肢を委ねるので、三成の袖をきゅっと握ると頷いて声を潜めた。


「今日は一緒に居たいの。へ、変なことしないでよね!」


「な、なに!?するわけないだろうが!」


…そう言いながらも桃に関してはうまく自制心の働かない三成は頬を赤らめて、謙信は肘掛けに頬杖をつきながら面白くなさそうに“へえ”と言った。


「もしかして見せつけられちゃったのかな。いいよ私は私の仏と対話でもするよ。とにかく兵を失うことなく降伏してくれてよかった。次が本当の戦だからね」


ちょっと不機嫌になってしまった謙信は酒宴が続く中腰を上げて、兼続と共に部屋を出て行った。


桃はそんな謙信が気にかかったが、それよりも家康と三成を同じ部屋に置いておきたくなくて、続いて立ち上がると三成の手を引っ張った。


「もう行こ。お願いだから家康さんと一緒に居ないで。居て欲しくないの」


「…わかった。幸村、後を頼んでいいか?」


「はい。元親殿と家康公の監視は拙者にお任せ下さい」


信頼感抜群の幸村に桃が手を振るとつられてやや手を挙げかけて慌てて手を戻し、幸村に笑みを誘われながら部屋を出て三成の手を握った。


「…暑い!」


「えー、そんなことないよ。相変らず照れ屋さんなんだから」


「そんなことを俺に言うのはそなただけだ」


ぶっきらぼうで愚直で苛烈すぎるほど根が正直な石田三成。

扱いにくいことで有名な三成を持て余す者も多く、そんな中こうして飾らずに慕ってくれる女子は、桃だけ。


だから離したくないのに、近い将来離れて行ってしまう愛しい女子――


「その…月のものは来たのか?」


「え?ううん、まだなの。…やっぱり…そうなのかな」


「わからぬが…そうであってほしいとは思う」


三成の部屋に着くと早々に床に寝かされて掛け布団を首までしっかりとかけられて、隣に潜り込むと桃が笑った。


「腕枕希望!」


「甘えたがりが」


不平を言いながらも言うことを聞いてくれる。


三成は、そういう男。
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