優しい手①~戦国:石田三成~【完】
桃は早速幸村に贈ってもらった着物に着替え、2人が居る部屋の襖の前でもじもじしていた。


「…な、なんか改まると…照れるなあ…」


第一、女所帯で育った桃は男と接する機会はほとんどなかった。

女の子にするようにして幸村や三成にハグや頬にキスをしてきたが、最近なんだかそれがしづらくなってきている。


「意識しすぎだよね、恥ずかしい!」


自分に言い聞かせ、襖を開けると…杯を傾けていた二人の視線が一気に集まった。


「あ、あはは…これ、どうかな?」


ぎくしゃくと立ち上がりながら二人の間に座る。


ただ静かに見つめてきている三成と、笑顔いっぱいの顔で歯をほころばせる幸村。


対照的な二人の反応ではあったが、緊張している桃はそれに気付かず恥ずかしくなって俯く。


「な、なんか言ってよ。似合ってないなら着替えてくるし!」


「…いや、似合っている。幸村、世話をかけたな」


――まるで桃を我が物顔のようにしてそう言った三成に対し、幸村は笑いながら豪快に酒を煽る。


「いやいや、よくお似合いです。越後へと共に行く際はぜひそちらもお持ちになって下さい」


「…越後?」


桃は早速美味しそうな魚に手をつけていて、二人の緊迫したやり取りに全く気付いていない。


「はい、もし桃姫さえよければ一度越後に、とお話いたしております故」


「越後になど行く予定はない。第一俺は秀吉様の家臣。やすやす離れるわけには…」


「ん?いや、拙者は桃姫をお誘い申し上げたのです。三成殿は秀吉公の重臣。いつ攻め込まれるともわからないのですからお傍から離れてはいけませぬ」


――火花が散り合う中、桃はのんきな声を上げていた。


「わあ、このお魚美味しいね!…あれ?二人とも食べないの?」


交互に二人を見ながら桃が不思議そうな顔をするので、二人は仕方なく箸を取った。


「謙信公は天下取りに興味のない方だと聞いているが、攻め込まれたらどうするのだ?」


「自ら攻め込むことは万が一でもございませぬが、攻め込まれた場合…容赦なきお方。秀吉殿も迂闊に手を出されぬ方がよかろうかと」


――上杉を倒さねば天下は取れない。

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