優しい手①~戦国:石田三成~【完】
目を覚ました時――傍らには三成が座っていて、心配そうに顔を覗き込んでいた。


「目が覚めたか」


「…えっと…私どうして…?」


寝かされていた布団から起き上がろうとすると、肩を押されてまた沈む。


「しばらくは横になっていろ。そなたは風呂で上せたのだ」


団扇で涼しい風を送ってくれながらなお心配そうにしている三成をぼんやりと見ながら…


いきなり激しいキスをされて、そのせいで気絶してしまったことを思い出し、薄い掛け布団を被りながら恥ずかしさに耐えていると…


ふと自分が浴衣を着ているのに気付いてまた顔だけ出す。


「これ…もしかして…着替えさせてくれたの?」


――聞いた途端顔が赤くなった三成の反応で、図星だったことを読み取った桃はさらに問い詰めにかかる。


「…見た?私の裸…見ちゃった!?」


「………………見た」


逡巡した後苦悩に顔を歪めながら正直に答えた三成に飛び掛かるようにして腕を掴む。


「どこまで見たの!?まさか…全部!?」


「…………………全部、見た」


顔を背けてはいつもの冷静さを取り戻そうと瞳を閉じる三成を穴が空くほど見つめた後…桃は顔を覆ってうずくまった。


「………胸ちっちゃいの気にしてるのに…!ちっちゃかったでしょ?笑えたでしょ!?」


がくがくと身体を揺らしてくる桃の歯に着せぬ物言いに、さらに三成は顔を赤くしながら咳ばらいをして桃が傷つかない言葉を必死に探す。


「…俺はそのくらいの方が好きだ。それに胸など触っていれば大きくなると言うし、俺が大きくして…」


「な、何言ってるの三成さん!もうっ落ち込みたいから一人にさせて!」


「う、うむ」


ぎこちなく立ち上がり、部屋を出て行く三成を見届けた後桃は布団に突っ伏した。


「…お嫁に行けない…」


最大のコンプレックスに桃はへこんでいた。


――部屋を出た三成が口元を覆いながら足早に私室へ向かっていると…


「おお三成!耳に入れておきたいことがある!」


…直江兼続だ。


信長を含め大名が喉から手が出るほど欲しがる知謀の武将。


罠を仕掛けに三成に近付いた。
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