3年分のキス




期待を裏切ることなんてできなかった
わたしの叶わない感情に母をも振り回すことなんてできるわけがなかった

慣れない袴にゆっくりと足を進めながら思った


母は誇らしげに前を歩いている
その後ろ姿からはどんな顔をしているかさえ想像できた


お見合いの部屋が近づくにつれわたしの心臓の音は大きくなっていく

目を合わせた瞬間に、逃げられたりしないだろうか
袴が似合わなさすぎて断られたりしないだろうか

そして相手の人はどんな人なんだろうか


前にいた母の足が止まった




「…いくわよ」




彼女が襖に手をかけてふっと戸を開いた瞬間に

ぎゅっと目を閉じて
愛しかったあの笑顔の残像を振り払った





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