雨と傘と
その時、予鈴が校舎に響き渡った。
現実が、目の前を暗くする。

「幸葉、悪いけど話はまた今度にしよう。…先に教室に戻ってて。」

朔ちゃんはこちらに背を向けて立ち上がると、そう言った。

「うん…分かった。」

私は、朔ちゃんに掛ける言葉が見つからなくて、返事だけ返して教室に走った。その場にとどまることは、してはいけない気がしたから。



授業が始まる時間ギリギリに、後ろの席に着く朔ちゃんの気配がしたけど、後ろは振り返らなかった。



朔ちゃんはプライドが高いから、きっと弱っているところを見られたくないんだと思うし。私は考えなくてはならないことがたくさんあった。これから、どうするか。何ができるか。



自信なんてない。
不安ばかりが膨らんでいく。

でもやっぱり、春にいと朔ちゃんを好きって気持ちは確かだから。



恐くても、ぶつかるしかない。



これが、正しい道でなくても。
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