契約恋愛~思い出に溺れて~


きっと、私だけでは満たせなかった。
紗優の心の隙間。

ユウがいないと落ち着けない私は、多分とても不完全で揺らぎやすくて、
あの子に安心を与えることは出来なかったんだと思う。

でも、英治くんは違う。

一人でも揺らぎないほどドンと構えていて。
傍に居ると安らげるのだと、そう思う。

私自身も、そんな風に感じていたもの。


『それは光栄だね』


その言葉に、自然に笑みがこぼれてきた。
結構言うけれど、口癖なのかしら。


「……英治くん」

『なに?』

「会いに行ってもいい?」

『……』


空気が止まる。

心音が激しく高鳴って、体中がその音に合わせて振動してるみたい。

時間にして、30秒くらい沈黙が続いた。
答えを待つのに耐えられなくなって、私はいい訳のように付け加えた。


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