契約恋愛~思い出に溺れて~
「お茶、いれてくるね」
私はそう言ってキッチンへと向かった。
紗優は英治くんの隣に座り、父と彼の会話を大人しく聞いている。
「紗彩、ケーキがあるからコーヒーを入れてくれる?」
母に言われ、家の中で一番いいコーヒー豆を出した。
リビングからは時折り笑い声が聞こえる。
父と英治くんは仲良く話しているようだ。
ホッとして自然に笑顔になった私を、母が覗きこんでくる。
「あの人と上手くいってるようだね」
「え?」
「幸せそうな顔してる」
「そう?」
「心配してたけど。……良かったね」
「母さん」
「ユウさんみたいな人だったらと、心配してた」
いつもなら、悔しいながらに我慢するユウに対する言葉が、今日は妙に気になった。