契約恋愛~思い出に溺れて~
「だからお前はバカだって言ってるんだよ」
「うるさい。もういいんだ。俺は、アヤが幸せになってくれればそれで」
グイッと煽るように黒髪の男の人はビールを流し込んだ。
途端に頬の赤みが増し、隣の男の人は困ったように頭をかく。
「弱いんだからそのあたりにしとけよ」
その時、酔っていない方の男の人と目があった。
一瞬で、現実世界に引き戻される。
彼は驚いた顔をした後、ゆるく笑って、酔っぱらった方の男の人の後ろを通って、私の隣の席に移ってきた。
「一人?」
「ええ」
「何かあったの?」
こんな風に女の人に話しかけるのに、抵抗の無い人なんだ。
ユウもそうだったな。
初めて会った時、泣いて落ち込んでた私に、よりにもよって鼻水が出るからティッシュをくれとか言ったんだった。